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§大規模災害と労働関連法§

始めに・・・

この度の東日本大震災で被災された方々にお見舞い申し上げると共に、
災害でお亡くなりになられた方々のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。


今回の事で改めて思ったんですが、自然の猛威の前には法律がどうこうって話は本当に無力です。
押し寄せる津波に対しても、被災地の方々に対しても何ひとつできる事はないですもんね。

とは言っても、幸いにも災害を切り抜けて生き残った方々も、災害に会わなかった地域に住んでいる方々も、
当然これからも生き続けていかなきゃいけない訳です。
ですから、万が一今回の様な大災害に巻き込まれた後、少しでも早く普通の生活に戻る為に、
社労士が関わる分野で何か役に立つ話はないか?と、調べてみたんですが、
労働法なんてのは言わば平時の法律なんで、今回の様な災害時についての取り決めは少ないんですね。
とはいっても、いくつか知っておいた方がいい法律がありますので、以下にまとめてみました。


まず今更の話なんですが、社労士が扱う法律って会社と従業員の間の事がほとんどですよね?
特に、今回の地震と津波は日中に起こりましたんで、社労士としては、

①仕事中に天災に出くわした
②天災で会社が無くなった

っていうふたつの事態を考える必要があると思います。
ですから、この二つに焦点を当ててお話ししていきますね。

 

まず①にですが、仕事中に今回の地震と津波の様な天災に出くわした場合、
経営者さんとしてはどういった事を押さえておけばいいでしょうか・・・?
もちろん、最優先は従業員さんとそのご家族の安全の確認ですね。

で、従業員さんとご家族が無事だったらとしても、
もし会社に被害が出ていれば当然その対策がいるでしょうし、
会社に直接の被害がなくても、様々な対応に長時間追われる事になるでしょう。

普通の時ならそれこそ週40時間がどうの残業がどうだって話になりますが、
労働基準法第33条には『災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等』てのがありまして、
要は、会社は災害とかの突発事態が起こった時は、それを理由に残業させてかまいませんって内容です。
ま、常識的には当たり前って話ですが、法律的にOKってなってるのは心強いですね。
なお、通常は従業員に残業させるには、通称「36協定」ってのを監督署に出さにゃいかんのですが、
役所への届出も事後でOKってなってます。
万一会社が大変な時は、従業員さんは家族の無事を確かめた後は会社の復旧にがんばりましょうね。

なお、一方で従業員さん側に有利な事もありまして、
同じく労働基準法第25条には『非常時払』ってのがあります。
災害などの場合には、従業員さんは「前借り」することができるし、会社は払わにゃいかんって内容です。
ただ、「前借り」できるのは、もちろん請求した日の分までですから(笑)


ま、ここまでは経営者さん・従業員さんとも無事でいた時の話ですね。
では、仕事中に今回の様な災害に巻き込まれ、ケガをしてしまった時はどうなるでしょうか?
普通でしたら労働災害、経営者さんなら特別加入してましたか?って話になりますよね?

まず、こういった場合『災害救助法』(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO118.html)って法律が
優先的に適用されますので、医療を始めとした様々な支援はその法律がカバーする事になります。

ちなみに、仕事中に今回の様な天災でケガしてしまったとしても労災の対象にはなりません。

http://jisin.info/rousai3.aspx(厚生労働省通達 基収第2950号)

要は、仕事中であったとしても、天災でのケガは仕事が原因ってことにはならないって話です。

ちなみに、絶対に労災対象外って訳じゃないんですが、
仮に労災保険の対象になったとしても、災害救助法の助けの方が優先されます。

 

じゃ、次に②のケース、万が一天災で会社が無くなってしまったらどうすればいいでしょうか・・・?
ここから先は、経営者さん従業員さん問わず押さえておいていただきたいんですけど、
当然、以後はその会社で仕事ができない訳ですよね?けど、雇用契約は残っています。
ご存知の通り労働基準法では解雇について厳しい制限を設けているんですけど、
労働基準法第20条では『天災事変その他やむを得ない』時には、いわゆる解雇予告、
つまり30日分の賃金を払うとか、30日前に予告するとかってのが不要になります。
つまり、法的には即時解雇が可能になる訳です。

ま、会社がなくなれば解雇もへったくれもないんですけど、
じゃ、従業員さんには何も保障がないかというとそうでもないんですね。

まず、会社がなくなって給料が出ないって事も当然考えられますよね?
そういった場合、『賃金の支払の確保等に関する法律』ってのがありまして、
『事実上の倒産状態になった場合』には、その会社が労災保険に加入していたら、
上限はありますがもらえなかった分の給料を国の方から出してくれるって制度があります。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S51/S51F04101000026.html (第7条)


また、災害が一段落したら当然また働いて収入を得ていかなければなりませんよね?
とは言っても被災地で新しい仕事に就くのは非常に大変な事は容易に想像がつきます。

当然、当初は雇用保険、いわゆる失業保険の世話になるでしょうが、
そこで覚えておいていただきたいのは『広域延長給付』です。

http://www.roudou.biz/koyou/enchou/post_13.html

その地域の失業率が全国平均の2倍以上で、その状態が継続すると国の方で判断した場合には、
失業保険が通常もらえる日数より90日延長してもらえるって内容になります。
ま、必ずしも天災による災害を前提にしたものではないんですが、
被災地のその後の失業率次第では、発動される可能性が大きいと思いますので、
天災後に失業保険をもらうことになった場合、ハローワークの窓口で確認する事をお勧めします。

ちなみに、雇用保険には他の地域で仕事を探したいってことになった場合、
『広域求職活動費』と『移転費』ってのが前からありまして、
国の方で、遠方での職探しの為の費用や引越し代をみてくれます。
これは、天災による災害などの非常時でなくても申請する事ができます。


ところで、天災によるケガなどで長期間仕事ができず、そして万一『災害救助法』の援助がない場合は、
国からの保障ではどういったものが使えるでしょうか?

まず、会社で健康保険に入っている方は『傷病手当金』を受けられる可能性があります。
ケガなどで仕事ができないって場合、療養開始4日目から給料の3分の2が最大1年6ヶ月支給されます。
注意点は『任意継続』だと受給できない、つまり『在職中に手続しておかないといけない』という事、
ですから、天災後も何とか会社が続くという場合は、
健康保険が給料の3分の2を見てくれると覚えておいていただけたらと思います。
手続の窓口は、全国健康保険協会か年金事務所、大きい会社ですと健康保険組合って事もありますので、
今からでも健康保険証を見て確認しておきましょう。


では、会社がなくなってしまい退職扱いになってしまった、元々会社で健康保険に入ってなかったという状況で、
天災によるケガなどで長期間仕事ができず、そして『災害救助法』の援助がない場合、どうすればいいんでしょうか?

こういった場合でも、雇用保険に入っていた方でしたら『傷病手当』を受けられる可能性があります。
簡単に言うと『失業中なのに、ケガなどで仕事に就けない場合でも失業保険がもらえる』ってとこですね。
具体的には、15日以上ケガなどで仕事ができない場合支給されるというもので、
支給額は失業保険と同額ですので、ざっと給料の6~8割程度になります。
もらえる期間も失業保険と同じなので、人により勤務年数と年齢によって変わります。
もちろん、手続の窓口はハローワークです。

ただ、この『傷病手当』は、失業『後』のケガなどでないと対象にならない、
今回の災害に当てはめると、会社を辞めて失業保険の手続をした後に
天災でケガなどを負ったという状況でないともらえないんですね。
正直、使いにくいものだと思います。
健康保険に入っている方は、可能なら退職前に『傷病手当金』の手続をしておく事をお勧めします。

ところで、受給する為には『傷病手当金』『傷病手当』とも支給申請の手続が必要ですよね?
いずれも勤務先の会社から書類を出してもらう必要があるんですが、会社がなくなれば当然無理です。
こういった場合は、それに替わる書類はどういうものをそろえればいいか?申請窓口の方と相談してください。
たとえ、勤務先の会社が跡形もなくなくなってしまったとしても、
申請窓口の役所とは限りませんが、役所側には何らかのデータが残っている可能性がありますので、
ここは粘り強く役所と相談になるかと思います。


ちなみに、『傷病手当金』『傷病手当』とも、災害の時でなくても使える内容なんですが、
名前が似ていて、何度読んでも紛らわしいっすね(汗)
整理しますと、
○在職中のケガなどは、健康保険の『傷病手当金』
○退職後のケガなどは、雇用保険の『傷病手当』
となります。

なお、健康保険の『傷病手当金』と雇用保険の『傷病手当』の両方はもらえませんので、
もし、どちらも該当するって時は、万一使わないとならなくなった時に、
役所の窓口で、もらえる額ともらえる期間を確認してくださいね。
おそらくは健康保険の『傷病手当金』の方が、もらえる期間で有利な事が多いと思いますし、
正直、雇用保険の『傷病手当』は相当使いにくいものですから、
大抵は健康保険の『傷病手当金』をもらった方がいいって事になると思いますよ。

 

今回はいわゆる救済措置といった部分に絞ってお話しさせていただきました。
ま、『国の世話にはならんっ!』ってお考えの御仁もいらっしゃるかと思いますが、
そもそも国の最優先事項は『国民の生命と財産を守る事』なんですね。
大災害が無いに越した事はないですが、常に自分だけで自分の身を守れるとは限りません。
万が一の際、少しでも早く元の平穏な生活に戻れる様に、ちょっと頭の片隅に入れといてくださいね。


最後になりますが、被災地の方々の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

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